子どもが人種や民族の違いに気付く時期について
子どもは、2・3〜5歳頃に人種や民族の違いに気づくことが、先行研究で指摘されています。
いくつかご紹介すると
子どもは身体的特徴を基に民族の認識を3〜5歳までの間に獲得する。
子どもは、人種のアイデンティティと人種に対する偏見は、少なくとも2〜3歳で発達し始める。
3、4、5歳児から、幼児は身体上の多くの違いによく気づき、5歳までに、社会で肌の色が問題となり、どのように認識されるかが重要であることを学ぶ。
子どもは2歳半から、人種、肌の色や身体、性の違いに気づき、3歳までに、偏見につながる考えや感情である前偏見(Pre-prejudice)を示す。
加えて、幼児は、保育者とのかかわりから、無意識のうちに性差別や人種差別を学習する恐れがある。
このように、子どもは2,3歳頃から、肌の色や身体的特徴を基に人種や民族の違いに気付きはじめると言われています。
重要なのは、Derman-Sparks(1994)が指摘するように、子どもが大人(保育者)とのかかわりから性差別や人種差別を学習する恐れがあることです。
注意
このような差別は、海外だけでなく日本の保育現場で見られます。
日本の保育現場でも、幼児が差別などの排他的言動をとるかどうかは、外国にルーツを持つ子どもの差異に対する保育者の対応が影響すると報告されています
佐藤(2004),佐藤(2005),上野・石川・井石・田渕・西原・政次・宮崎(2008)など
そのため、子どもの前で、大人が外国にルーツを持つ人に対して偏見のない関わり方をすることが大切になります。

引用文献
- Brown,Rupert (1995) Prejudice: Its Social Psychology. Blackwell Publishers (邦訳R·ブラウン著 (1999) 偏見の社会心理学橋口捷久・黒川正流編訳 北大路書)
- Chang,H.N.L.,Muckelroy,A.& Pulido-Tobiassen,D.(1996). Looking In, Looking Out: Redefining Child Care and Early Education in a Diverse Society. California Tomorrow, Fort Mason Center, Building B, San Francisco,37-42.
- Derman-Sparks,L.(1989) Anti-bias Curriculum: tools for empowering young children. Washington, DC: National Association for the Education of Young Children. (邦訳 ダーマン・スパークス著 (1994) 玉置哲人・大倉三代子訳 ななめから見ない保育 解放出版社)
- 佐藤千瀬 (2004) 国際児に対する保育者の捉えと日本人園児の実態のずれ: A 幼稚園の 3 歳児クラス の集団形成過程を通して 学校教育学研究論集 10 1-14
- 佐藤千瀬 (2005) 幼児の外国人園児に対する差異化のプロセス: A 幼稚園の 5 歳児クラスの事例より 学校教育学研究論集 11 39-51
- 上野葉子・石川由香里,・井石令子・田渕久美子・西原真弓, 政次カレン・宮崎聖乃 (2008)長崎市における多文化保育の現状と展望 保育学研究 46(2) 277-288