厚生労働省(2017)の「保育所保育指針」の内容と解説から、多文化共生保育と関係のありそうな箇所を抜粋しました。
管理人
「日常生活の中で、我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ。」
記載箇所:保育所保育指針 3歳以上児の保育に関するねらい及び内容 ⑵狙い及び内容 ウ 身近な環境と関わりに関する領域「環境」2 内容 (6)
子どもが、日常生活の中で我が国や地域社会における様々な文化や伝統に触れ、長い歴史の中で育んできた文化や伝統の豊かさに気づくことは大切なことである。
このため、例えば、保育士と一緒に飾りを作りながら七夕の由来を聞くなどして、次第にそのいわれやそこに込められている人々の願いなどにも興味や関心をもつことができるようになることが大切である。
また、保育所においては、例えば地域の祭りに合わせて、地域の人が園で太鼓のたたき方を見せてくれる機会をつくるなど、地域の人々との関わりを通して、自分たちの住む地域に親しみを感じたりすることが大切である。なお、身近な地域社会の文化な伝統に触れる際には、異なる文化にも触れるようにすることで、より豊かな体験にしていくことも考えられる。
さらに保育所の生活で親しんだ伝統的な遊びを家族や地域の人々と一緒に楽しむことなどにより子どもが豊かな体験をすることも大切である。
厚生労働省(2018) 保育所保育指針解説
「文化や伝統に親しむ際には、正月や節句など我が国の伝統的な行事、国歌、唱歌、わらべうたや我が国の伝統的な遊びに親しんだり、異なる文化に触れる活動に親しんだりすることを通じて、社会とのつながりの意識や国際理解の意識の芽生えなどが養われるようにすること。」
記載箇所:平成30年度保育所保育指針3歳以上児の保育に関するねらい及び内容 ⑵狙い及び内容 ウ 身近な環境と関わりに関する領域「環境」 [ウ]内容の取り扱い ④
子どもは、地域の人々とのつながりを深め、身近な文化や伝統に親しみ中で、自分を取り巻く生活の有様に気付き、社会とのつながりの意識や国際理解の意識が芽生えていく。
このため、生活の中で、子どもが正月のもちつきや七夕の飾り付けなど四季折々に行われる我が国の伝統行事に参加したり、国歌を聞いたりして自然に親しみを感じたりするようになったり、古くから親しまれてきた唱歌、わらべうたの楽しさを味わったり、こま回しや凧揚げなど我が国の伝統的な遊びをしたり、様々な国や地域の食に触れるなど異なる文化に触れたりすることを通じて、文化や伝統に親しみをもつようになる。
幼児期にこのような体験をすることは、将来の国民としての情操や意識の芽生えを培う上で大切である。
このような活動を行う際には、文化や伝統に関係する地域の人材、資料館や博物館などの連携・協力を通して、異なる文化にも触れながら子どもの体験が豊かになることが大切である。
厚生労働省(2018) 保育所保育指針解説
「子どもの国籍や文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるようにすること。」
記載箇所:保育所保育指針 4 保育の実施に関して留意すべき事項(1) 保育全般に関わる配慮事項 オ
保育所では、外国籍の子どもをはじめ、様々な文化を背景にもつ子どもが共に生活している。保育士等はそれぞれの文化の多様性を尊重し、多文化共生の保育を進めていくことが求められる。
例えば、外国籍の保護者に自国の文化に関する話をしてもらったり、遊びや料理を紹介してもらったりするなど、保育において子どもや保護者が異なる文化に気付き、興味や関心を高めていくことができるよう、子ども同士の関わりを見守りながら、適切に援助していく。その際、外国籍の子どもの文化だけでなく、宗教や生活習慣など、どの家庭にもあるそれぞれの文化を尊重することが必要である。
保育士等は、自らの感性や価値観を振り返りながら、園児や家庭の多様性を十分に認識し、それらを積極的に認め、互いに尊重し合える雰囲気をつくり出すなとに努めることが求められる。
厚生労働省(2018) 保育所保育指針解説
「外国籍家庭など、特別な配慮を必要とする家庭の場合には、状況等に応じて個別の支援を行うよう努めること。」
記載箇所:保育所保育指針 第4章 子育て支援 2 保育所を利用している保護者に対する子育て支援 (2)保護者の状況に配慮した個別の支援 ウ
外国籍家庭や外国にルーツを持つ家庭、ひとり親家庭、貧困家庭等、特別な配慮を必要とする家庭では、社会的困難を抱えている場合も多い。例えば、日本語によるコミュニケーションがとりにくいこと、文化や習慣が異なること、家庭での育児を他に頼ることができないこと、生活が困窮していることなど、その問題も複雑化、多様化している。
また、多胎児、低出生体重児、慢性疾患のある子どもの場合、保護者は子育てに困難や不安、負担感を抱きやすい状況にあり、子どもの生育歴や各家庭の状況に応じた支援が必要となる。
こうした様々な問題に不安を感じている保護者は、その悩みを他者に伝えることができず、問題を抱えこむ場合もある。保育士等は保護者の不安感に気付くことができるよう、送迎時などにおける丁寧な関わりの中で、家庭の状況や問題を把握する必要がある。
子どもの発達や行動の特徴、保育所での生活の様子などを伝えるなどして子どもの状況を保護者と共有するとともに、保護者の意向や思いを理解した上で、必要に応じて市町村等の関係機関やかかりつけ医と連携するなど、社会資源を生かしながら個別の支援を行う必要がある。
厚生労働省(2018) 保育所保育指針解説
多文化共生保育と関係のありそうな箇所を簡潔にまとめると、
- 「外国にルーツを持つ子どもの一人一人の実態を把握してかかわること」
- 「外国にルーツを持つ子どもの文化を尊重すること」
- 「(外国にルーツを持つ方が多い地域では)地域の文化に触れること」などが読み取れます。


幼稚園教育要領と幼保連携型認定こども園教育・保育要領にも、一部の用語は異なりますが同様の内容や関係のある内容がみられます。


- 厚生労働省 (2017) 保育所保育指針
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000160000.pdf (2020年2月27日閲覧) - 厚生労働省 (2018) 保育所保育指針解説 株式会社フレーベル館