文部科学省(2017)の「幼稚園教育要領」の内容と解説から、多文化共生保育と関係のありそうな箇所を抜粋しました。
管理人
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。」
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
記載箇所:幼稚園教育要領前文 学校基本法 第2条の五
「海外から帰国した幼児や生活に必要な日本語の習得に困難のある幼児については、安心して自己を発揮できるよう配慮するなど個々の幼児の実態に応じ、指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。」
記載箇所:幼稚園教育要領 第5節 特別な配慮を必要とする幼児への指導 2 海外から帰国した幼児等の幼稚園生活への適応
国際化の進展に伴い、幼稚園においては海外から帰国した幼児や外国人の幼児に加え、両親が国際結婚であるなどのいわゆる外国につながる幼児が在園することもある。
これらの幼児の多くは、異文化における生活経験等を通して、我が国の社会とは異なる言語や生活習慣、行動様式に親しんでいるため、一人一人の実態は、その在留国や母国の言語的・文化的背景、滞在期間、年齢、就園経験の有無、さらには家庭の教育方針などによって様々である。また、これらの幼児の中には生活に必要な日本語の習得に困難のある幼児もいる。
そのため、一人一人の実態を的確に把握し、指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うとともに、全職員で共通理解を深め、幼児や保護者と関わる体制を整えることが必要である。
こうした幼児については、まず教師自身が、当該幼児が暮らしていた国の生活などに関心をもち、理解しようとする姿勢を保ち、一人一人の幼児の実情を把握すること、その上で、その幼児が教師によって受け入れられ、見守られているといえ安心感をもち、次第に自己を発揮できるよう配慮することが重要である。そのため教師はスキンシップをとりながら幼児の安心感につなげる関わり方をしたり、挨拶や簡単な言葉掛けの中に母国を使ってみたりしながら信頼関係を築き、幼児が思ったことを言ったり気持ちを表出したりできるよう努めることが重要である。
また、教師や他の幼児との温かい触れ合いの中で、自然に日本語に触れたり、日本の生活習慣に触れたりすることができるように配慮することも大切である。
さらに、幼児が日本の生活や幼稚園生活に慣れていくよう、家庭との連携を図ることも大切である。保護者は自身が経験した幼稚園のイメージを持っているため、丁寧に園生活や園の方針を説明したりすることなどが必要である。
様々な背景をもった幼児が生活を共にすることは、異なる習慣や行動様式をもった他の幼児との関わり、それを認め合う貴重な経験につながる。そのことは、幼児が一人一人の違いに気付き、それを受け入れたり、自他の存在について考えたりするよい機会にもなり得る。こうした積極的な意義を有する一方、幼児期は、外見など自分にとって分かりやすい面にとらわれたり、相手の気持ちに構わずに感じたことを言ったりする傾向も見受けられる。教師は、そうした感情を受け止めつつも、一人一人がかけがえのない存在であるということに気付くよう促していきたい。
文部科学省 (2018) 幼稚園教育要領解説
「日常生活の中で、我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ。」
記載箇所:幼稚園教育要領 第2章 ねらい及び内容 3 身近な環境との関わりに関する領域「環境」2 内容 (6)
幼児が、日常生活の中で我が国や地域社会における様々な文化や伝統に触れ、長い歴史の中で育んできた文化や伝統の豊かさに気づくことは大切なことである。
このため、例えば、教師と一緒に飾りを作りながら七夕の由来を聞くなどして、次第にそのいわれやそこに込められている人々の願いなどにも興味や関心をもつことができるようになることが大切である。
また、幼稚園においては、例えば地域の祭りに合わせて、地域の人が園で太鼓のたたき方を見せてくれる機会をつくるなど、地域の人々との関わりを通して、自分たちの住む地域に親しみを感じたりすることが大切である。なお、身近な地域社会の文化な伝統に触れる際には、異なる文化にも触れるようにすることで、より豊かな体験にしていくことも考えられる。
さらに、幼稚園生活で親しんだ伝統的な遊びを家族や地域の人々と一緒に楽しむことなどにより幼児が豊かな体験をすることも大切である。
文部科学省 (2018) 幼稚園教育要領解説
「文化や伝統に親しむ際には、正月や節句など我が国の伝統的な行事、国歌、唱歌、わらべうたや我が国の伝統的な遊びに親しんだり、異なる文化に触れる活動に親しんだりすることを通じて、社会とのつながりの意識や国際理解の意識の芽生えなどが養われるようにすること。」
記載箇所:幼稚園教育要領 第2章 ねらい及び内容 3 身近な環境との関わりに関する領域「環境」 [内容の取り扱い] ⑷
幼児は、地域の人々とのつながりを深め、身近な文化や伝統に親しみ中で、自分を取り巻く生活の有様に気付き、社会とのつながりの意識や国際理解の意識が芽生えていく。
このため、生活の中で、幼児が正月のもちつきや七夕の飾り付けなど四季折々に行われる我が国の伝統行事に参加したり、国歌を聞いたりして自然に親しみを感じたりするようになったり、古くから親しまれてきた唱歌、わらべうたの楽しさを味わったり、こま回しや凧揚げなど我が国の伝統的な遊びをしたり、様々な国や地域の食に触れるなど異なる文化に触れたりすることを通じて、文化や伝統に親しみをもつようになる。
幼児期にこのような体験をすることは、将来の国民としての情操や意識の芽生えを培う上で大切である。
このような活動を行う際には、文化や伝統に関係する地域の人材、資料館や博物館などの連携・協力を通して、異なる文化にも触れながら幼児の体験が豊かになることが大切である。
文部科学省 (2018) 幼稚園教育要領解説
多文化共生保育と関係のありそうな箇所を簡潔にまとめると、
- 「外国にルーツを持つ子どもの一人一人の実態を把握してかかわること」
- 「他の国を尊重し平和と発展に寄与する態度を養うこと」
- 「(外国にルーツを持つ方が多い地域では)地域の文化に触れること」などが読み取れます。


幼稚園教育要領と幼保連携型認定こども園教育・保育要領にも、一部の用語は異なりますが同様の内容や関係のある内容がみられます。


- 文部科学省 (2017) 幼稚園教育要領 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/05/12/1384661_3_2.pdf (2020年2月18日閲覧)
- 文部科学省 (2018) 幼稚園教育要領解説 株式会社フレーベル館